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I want to... Dream as if I'll live forever. Live as if I'll die today.
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背中に太陽を感じながら
眠い目を擦る、路地裏を歩く。
沈殿した夜が、足元にひたひた打ち寄せる、
雨上がりの夜上がり。
足跡から、匂いの湯気が立ち昇り、わらべうたって溶けていく。

(――暗いくらくら夜の黒、とっくのとっくに逃げてった、
 匂いを残して逃げてった……)

背中を屈めた、巻き髪のおばあさんばかりが、
毎朝、毎朝、アスファルトを磨いた。
ホースで、がりがりと、夜の垢を、洗い流した。

(ああ、あの、おばあさん、あのね、さっき、あの街路樹の根元に、
 仕事上がりのお兄さんが、吐いちゃったみたい、ですよ。
 なにを?
 すみません、私、スーツの背中しか、見てなくて……)

立ち止まる。しかなかった。
目の前には、黒い夜の川。
轟々と、無秩序に、意味も無く、全て押し流し、

(私はこの詩が大好きなんです
 そう笑って、大学の授業、清潔なAB01大教室で、マイク使って、
 優しい初老の某先生は
 詩と呼んだものを 演説した
 演説した。スピーチした。音読した。四分音符と四分休符で、
 メトロノームのように。
 詩と呼ばれたものから、一瞬で、音と匂いが蒸発し、
 干からびた言葉だけ、残った。)


ただ、轟々と。
排水溝へ流れていく、あれが詩だよ。
これが、うただよ。
風の流れと、私の呼吸、低い太陽の温もり、ビルの影。
ほらほら、カラスが鳴いてるよ。わらべうたって鳴いてるよ。
音、と、音 と、と、
言葉だけでは、駄目だのに、
夜の匂いを救えないのに。

ね。

 

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 ある日、一人の娘の左胸から、冬虫夏草が生えてきた。
 最初は小さな小さな、風にも飛んでしまうような茸で、娘はぞっとしながらそれを引き抜いた。1日経つとすぐにまた生えた。引き抜く。すぐにまた生える。何日か経って、娘が眠っている間に、茸は彼女の寝間着を破るほどに大きくなった。もう引き抜くことも隠すことも出来ない。娘は咽び泣き、彼女の家族や友人も泣いた。もしくは、影で散々に化け物呼ばわりするか、吐いた。
 茸はぐんぐんと成長を続け、娘は身体を起こすことも出来ず、寝たきりになった。心臓が鼓動を打つ度にこれは成長していく。友人も、家族も、彼女から後退った。彼女は水も食べ物も口にせず、また、それを望まなかった。目を開けてぼんやりしているか、そうでなければ眠っていた。その間にも茸は育った。
 やがて茸はその傘を大きく広げ、まるで娘は、芝生に寝転がり、日傘をさしかけてもらっているような案配になってきた。娘は少しずつ言葉を忘れ、その代わり、いつからか、そっと茸に触れてみるようになっていた。すっかり衰弱した細い指で、傘を撫で、擦り、触れる。いつしか娘は微笑んでいた、貼りついた、永遠の微笑みで、自分の胸から生えた傘を撫で続ける。
 優しくその背を叩き、ハミングし、抱きしめ、そんな娘をもはや誰も見ていない。友人は去り、家族は逃げ、彼女は一人残された。
 恍惚と誇りと幸福を笑顔に浮かべ、娘は、


 突然の激痛に娘は絶叫する。
 全身防護服に身を包んだ大人たちが何人も、何人も、茸に手を掛け、渾身の力で引っ張っているのだ。言葉を忘れた娘はただ絶叫するしか無かった。
 それでも本来ならば。引き離すのは不可能だった。しかし、一年の時を経た巨大な茸は、自らの身体を支えきれず、根が腐り始めていた。何度もぐらぐらぐらと揺れたあと、あっさりと、ずぼりと音を経て、茸は引き抜かれた。心臓を奪われたそれは瞬く間に黒く変色し、萎びて、ぼろぼろに崩れた。
娘が絶叫している、強引に帰ってきた言葉で喉を震わせ絶叫している。血の一滴も流れない娘の胸には巨大な穴が空き、黒い闇を覗かせていた。


その哀しみと怒りの声は誰の耳にも届かず、
ぶつりと声が途絶え、身体を痙攣させ、娘は倒れた。
そしてもちろん、死んだ。







それは彼女の夢、彼女の恋人、彼女の全て、彼女の理想、いつの間にかの彼女自身。
いいや、それ以外、
いやいや、これらのどれか、これらの全て、何もかもは曖昧。

脱け殻は脱け殻。
狂気を逃れ、願わくは奪われないことを。

 
 
ひきこもるなら田舎にしよう。
隣の家まで一キロメートル
夜になったら真っ暗で
虫の声しか聞こえない
虫の言葉は分からない。
 
 
(ふらりと栗の香る風
 遠くをゆく電車の音
 
(たたん たたん たたん たん
 
 
ひきこもるなら田舎にしよう。
匂いのしない静寂に
夜空は溢れる天の川
噂話の影もなく
人っ子一人歩かない……
 
 
(枯れたすすき野 それは夢
 幽霊が手招き 何か呟く
 
(た たん たたん たたん た
 
 
ひきこもるなら田舎にしよう。
粉々にしたテレビを飲み込み
郵便受けに杭を打ったら
家の残骸の上に立ち
電話線を微塵切るのだ
 
そうすればきっと私は
その時やっと私は
栗の香る東風の中に
人の声を聴き取れるに違いない
 
 
(た、い たた い あい、たい あい……
 (たん たたん たたん たたん たた……
 
 
ああ電車の音
そうか私は死にたいのか
いや
私は眠りたいのだ
 
ただ静かに


 
詩創作論の課題第一回目のもの。
「夏」をテーマに書いてこいとのことで、こんな感じになりました。
こちらの詩の方は多くは語りません。うん。蛇足になる。

それでは、追記からどうぞ。
 
 
詩創作論の課題、第二回目。ついでなので一緒にアップ。
北村太郎さんの「悪の花」中に
「ブナやケヤキも落葉が早い
 ウツギの類にはかわいそうな夏だった
 キョウチクトウにも」
という一節があるんですが
「秋の雲の劇」「巻雲」「積雲」という言葉も出てくるのですが

先生はおもむろにおっしゃいました

「うん、木の名前か雲の名前を作中に入れて、詩書いてきてね☆」

注:しかもなぜか私のメモには「木の名前と雲の名前」と書かれていた 泣いた


元原稿を提出してしまって今手元にないので、実際の原稿とちょっと違う部分があるかもしれま…せん…
原稿帰ってきてから直します^q^

それではでは、追記からどうぞー。

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