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I want to... Dream as if I'll live forever. Live as if I'll die today.
 
『竜の花嫁』 冒頭試し読み
東~東南アジアの山奥をイメージした異世界ファンタジー。
竜に嫁入りさせられたおっかない娘さんの話です。今回は幻想成分少なめ。風景重視。
冒頭を少しだけ抜き出してみました。雰囲気を味わっていただければ幸いです。

なお、妹には「ハードボイルドファンタジー」と言われました。……(・ω・;)??


◆そんな執筆中のBGM











 首筋がひやりとした。
 ぴんと張った長い黒髪の、うなじのすぐ傍に刃が入る。ユン婆の手はまったく躊躇わなかった。上向けた刃で、ざりざりと花嫁の髪を切り落としてゆく。
 昨日まで、村の誰よりも髪が長く、誰よりも乱暴で、誰よりも嫌われていた女は、今、無言で板間に座していた。洗い晒した麻の着物から覗く素足と両腕に、いくつかの青あざが見える。力の限りに暴れ、抵抗した彼女を、村の男たちが取り押さえた時の傷だった。花嫁を輪のように囲む女たちは、また彼女が暴れ出したらどうしようかと、緊張と恐れを顔に滲ませながら、板間へ落ちてゆく髪をじっと見ていた。
 花嫁を囲む女の一人が、ふと口に出した。
「切り揃えなくて良いのかい」
 ユン婆は、ちょっと視線をあげただけで、何も言わなかった。返事の代わりに、花嫁の髪の最後の一房を絶ち落とすと、手早く絹の紐で結んだ。髪に呪われないためのまじないだ。花嫁はそれを横目で見て、鼻で笑った。
「どうせなら丸刈りにすりゃあいいのに。これじゃあ唯の馬鹿みたいだ」
「そうさな」
 ユン婆は笑わなかった。花嫁を囲む女たちは笑えなかった。
「婿殿は髪型なんぞ気にせん。喉に引っかからなきゃあ十分じゃ」
「じゃ、やっぱり丸刈りの方がいいんじゃないか。これ、絶対、チクチクするよ。喉越し悪そう。刈っちまえよ」
「お前の髪ごとき、何も感じないだろうさ。長い髪は牙に絡まるから切らなきゃいかんがね」
 花嫁は鼻を鳴らした。嘘だね、と声に出さず唇を動かす。女たちはこの切りっぱなしの髪を見てさぞ胸がすっきりするだろう。
 板間の戸口に、使いに出ていた子供が顔を出した。
「村長さんが来たよ。お嫁入りの外套、出来たって!」
「そうか。ユギは来てるかい」
「ユギさん? どうかなあ、見かけなかったよ」
 ユン婆は、呆れと諦めの混じったため息をついた。
「呼んできとくれ。外套を着せるのは嫁の母親がやらなきゃいかん」
 花嫁は即座に言った。「会いたくないんだけど」
「嫁入りの決まりじゃ」
 座したまま、花嫁はユン婆を睨んだ。背中の曲がったユン婆の顔は、立っていても、座した花嫁のほんの少し上にあるだけだ。白濁した目はほとんど視力を失っているはずだが、ユン婆は両目をぎょろりと動かして花嫁を見返した。目は、黙れ、と告げていた。



いざ、続きは本編で。
 
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